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 今、多くの大企業が実施している”自社株買い”って何?? | 日本経済への影響を踏まえ簡潔に理解

近頃大企業が続々と行なっていて、企業の経営戦略の一環として注目される「自社株買い」。この手法は、企業が自らの発行した株式を市場から買い戻すことを意味します。この記事では、自社株買いとは何か?をはじめ、メリットとデメリットなど両面を見ることで今の経済動向の理解を深めていきましょう。

”自社株買い”とは?

自社株買いとは、企業が自分自身の発行した株式を市場から買い戻し、自己保有割合を高くすることを指します。これにより市場に出回る株式の数が減少し、株価やEPS(1株当たり利益)などに影響を与えます。

株式発行とは逆の行為とイメージするとわかりやすいです。↓

【株式発行】
  ”株式発行”は、株式を投資家に向け発行し買ってもらうことで資金を調達する

【自社株買い】
  ”自社株買い”は、逆に買ってもらった株式を買い戻すこと

自社株買いのメリット

自社株買いのメリットには、多様な要因がありますが大枠を理解するにあたり重要なことは下記3点です。
※今回は、簡潔に解説するためざっくり解説します。

・EPS(一株あたりの利益)向上
・株価上昇によるアピール
・買収防衛策

EPS(一株あたりの利益)の向上 

買戻すと言うことは発行済み株式数が減少するため、EPS(一株あたりの利益)が向上します。これにより株式の収益性が向上し、投資家にとって魅力的な投資先となります。
そのため配当と並ぶ株主還元策の一つとされています。

株価上昇による投資家アピール

投資家が投資是非を判断するのに用いる指標(自己資本利益率や株価収益率)が改善され、投資家からの”割安感”や”期待感”が高まり株価上昇を促します。
それがさらに注目を集め、株価上昇の好循環を生む可能性があります。

買収防衛策

自社株を加えて保有することで自己資本比率を高めることができ、外部からの敵対的買収のリスクを減少させることができます。

敵対的買収とは】 
”敵対的買収”とは、同意なき買収とも呼ばれ経営陣や株主などの同意を取らず実施する買収を指します。成立条件としては、発行済み株式総数の過半数(50%以上)を取得する必要があります。
自社株買いは、自社の持株割合を高めることで買収側企業に過半数を取得しづらくします

自社株買いの懸念点

メリットが多い自社株買いにもいくつか懸念される点があります。代表的には下記2点です。

・資金繰りの悪化
・投資機会の喪失

資金繰りの悪化

過度な自社株買いは、企業の資金繰りを悪化させる可能性があります。
多様な使い道がある自己資本(キャッシュ)を自社株買いに当てることが適切でない場合、企業の財務健全性に影響を及ぼすリスクがあります。

投資機会の喪失

自社株買いに資金を充てることで、将来の成長機会や投資機会を逃す可能性があります。特に新規事業や設備投資に資金を投じるべき時期に自社株買いを優先するのは問題となることがあります。
→「この会社にはもう投資機会がないのか?」と投資家から不安感を持たれる可能性も

まとめ

自社株買いは、企業が自らの株式を買い戻すことで、株価の安定化や株主価値の向上を図る手法です。

実は、現在各企業が自社株買いに乗り出している背景には東京証券取引所の「資本コストや株価を意識した経営」において対応要請が各上場企業に出されたことがあります。
多様な観点から経済を学び、関連性を理解していきましょう。