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私たちの預金はなぜ増えない?? | 1970年からの経済動向を踏まえ、現在の預金金利を知る

日本の民間銀行の預金金利は、経済の動向や政策の影響を受けて大きく変動してきました。本記事では、1970年代から現在までの預金金利の変遷を振り返り、各時期の経済状況の変化について解説します。

(前段)今と50年前、金利の違い

2024年現在、日本の民間銀行の定期預金金利は約0.01%という非常に低い水準にあります。銀行に預金してお金が増えた!と実感することが滅多にないのはもちろんです。
ex.)100万円を預金として預けていても、1年間で増えるのは100円だから

この超低金利は、2000年代以降のデフレ対策や景気刺激策、さらには新型コロナウイルスのパンデミックによる経済不安定に対応するための金融政策の結果ですが、実は50年ほど前は今の預金金利の600倍(6%)だったそうです。

どんな影響があり、どんな背景から金利は下がり続けてきたのか。
10年単位で経済動向踏まえ見ていきましょう。

1970年代 金利と経済

金利の動向

  • 1970年:定期預金金利は約6.0%
  • 1975年:第一次オイルショックの影響で5.0%に低下
  • 1979年:インフレ対策として再び引き上げられ、5.5%

経済状況の変化

1973年に発生した第一次オイルショックにより、原油価格が急騰しました。これにより日本経済はインフレに見舞われ、企業の生産コストが上昇し消費者物価も急騰。政府はインフレ対策として金利を引き上げ、金融引き締め政策を実施しました。

1978年には第二次オイルショックが発生し、再び原油価格が上昇しました。インフレが進行する中、政府は再び金利を引き上げましたが、経済成長は鈍化しました。

1980年代 金利と経済

金利の動向

  • 1980年:定期預金金利は約5.5%
  • 1985年:プラザ合意後、円高に対応するため4.5%に低下
  • 1989年:バブル経済の影響で再び低下し、3.5%

経済状況の変化

1985年のプラザ合意により、主要先進国が協調してドル安・円高政策を採用しました。これにより、日本の輸出産業は打撃を受け、円高不況が発生しました。政府は景気対策として金利を引き下げ、金融緩和を進めました。

1989年にはバブル経済が最盛期を迎えました。地価や株価が急騰し、資産価格が過大評価される状況が続きました。政府は過熱した経済を冷ますために金利を引き下げましたが、これがさらに投資ブームを加速させました。

1990年代 金利と経済

金利の動向

  • 1990年:バブル崩壊前夜、定期預金金利は約3.5%
  • 1995年:バブル崩壊後の景気低迷で2.0%に低下
  • 1999年:ゼロ金利政策が導入され、預金金利は0.1%

経済状況の変化

1991年にバブルが崩壊し、不動産価格と株価が急落しました。多くの金融機関が不良債権を抱え、経済成長は鈍化し、失業率が上昇しました。政府は景気回復のために金利を引き下げ、金融緩和を実施しました。

1997年にはアジア通貨危機が発生し、日本の金融機関も影響を受けました。山一證券や北海道拓殖銀行などの破綻が相次ぎ、金融不安が広がりました。政府は金利をさらに引き下げ、ゼロ金利政策を導入して経済の安定を図りました。

2000年代 金利と経済

金利の動向

  • 2000年:ゼロ金利政策により、定期預金金利は0.1%
  • 2005年:依然として低金利が続き、0.2%
  • 2008年:リーマンショックの影響で再び0.1%

経済状況の変化

2001年のITバブル崩壊により、世界的な株価下落とともに日本経済も低迷しました。デフレが進行し、消費者物価が下落しました。政府はゼロ金利政策を維持し、デフレ対策を強化しました。

2008年にはリーマンショックが発生し、世界的な金融危機が勃発しました。日本経済も大きな打撃を受け、輸出が急減しました。政府は再び金融緩和を進め、金利をほぼゼロに維持しました。

2010年代 金利と経済

金利の動向

  • 2010年:超低金利政策が続き、定期預金金利は0.1%
  • 2015年:マイナス金利政策導入前でも0.1%
  • 2019年:マイナス金利政策の影響で0.01%

経済状況の変化

2013年にアベノミクスによる金融緩和政策が開始され、日銀は大規模な資産購入を実施しました。これにより、株価が上昇し、円安が進行しました。インフレ目標を達成するため、金利は低水準に維持されました。

2016年には日銀がマイナス金利政策を導入しました。これにより、金融機関は日銀に預ける預金に対して手数料を支払うことになり、貸出を促進する狙いがありました。しかし、実際には貸出は思うように増えず、金融機関の収益が圧迫されました。

2020年代(現状) 金利と経済

金利の動向

  • 2020年:コロナ禍の影響で、定期預金金利は0.01%
  • 2023年:インフレ懸念があるものの、依然として0.01%

経済状況の変化

2020年、新型コロナウイルスのパンデミックにより、経済活動が大幅に制限されました。緊急事態宣言やロックダウンにより、消費と投資が大幅に減少しました。政府と日銀は大規模な経済対策と金融緩和を実施しました。

2023年にはワクチン普及と経済活動再開により、景気回復が見られましたが、エネルギー価格の上昇や供給制約によりインフレ懸念が高まりました。これに対処するため、金利政策の行方が注目されましたが、依然として低金利が維持されています。

まとめ

日本の預金金利は、経済の動向や政府の政策に密接に関連してきました。

1970年代のオイルショック、1980年代のプラザ合意とバブル経済、1990年代のバブル崩壊とアジア通貨危機、2000年代のリーマンショック、そして2020年代の新型コロナウイルスの影響と、各時期の重大な経済イベントが金利変動の要因となっています。これらの歴史的背景を理解することで、現在および将来の金利動向についてもより深い洞察が得られるでしょう。